私達の住んでいる周辺環境について過去を振り返り、現在よりも「良くなった」と思われる人達がどのくらいおられるでしょうか。私には年々加速度的に悪化しているように思えます。
つい先頃まで人間関係も長い歴史と伝統の中で、日本独特の文化があり、情緒あふれるわびやさびの世界がありました。そして海や山などの自然の中で、里山が創り出した人間と自然との見事な循環形社会が形成されていました。人間が山に入り常に手入れをすることにより木が育ち、また山を守ることによりきれいな水が得られ、田畑を潤し、小川から流れ出るきれいな水により海が守られ、収穫の時期には、たわわに実った米やその他の農作物を、私達に提供してくれていました。
朝日が昇る頃、野良仕事、夕日が沈む頃、仕事を終えて我が家に帰り、お風呂に入り・家族との団らん。単純な生活のようですが、その中で四季の移ろいを感じ、風や自然を感じていたのです。子供達は、家の周りや周辺の野山を駆けまわり、色々な遊びを通じ自然の中で多くの事を学んでいました。
また、人間関係も長く続いてきた家長制度が息づいていて、子供達はお年寄りや周辺の自然等を守って行くことや、敬う心を教えられ、そこには人間と自然との見事なまでのバランスがあったと思います。
最近発表された宮崎駿監督のアニメーション映画「干と干尋の神隠し」がベルリン国際映画祭で最高賞の金熊賞を受賞し世界中で評価を受け、話題になっています。その評価の中に色々な賞賛の言葉が出ていますが、私は彼のこれまでの作品の根底に流れているものは、人間性や自然に対して、素朴さや尊厳や敬う心を失ったらどうなるか、という事に対するアンチテーゼを表現していると思います。
子供達の周囲からどんどん自然との接触が遠ざけられ、自然の中で学び、大人になるために欠かしてはならない経験や楽しみを、大人達によって奪われています。私達はただ黙って手をこまねいて見ているだけで良いのでしょうか。
私は好きで始めた造園家の道ですが、経験を重ねる毎に多くの問題や疑問を感じています。私の研究テーマは「限りなく自然に近い庭の構築」にしておりますので、次世代の子供達のためにも身近なところで確実に残して行ける環境にやさしい庭造りを目指したいと考えております。また多くの皆様にその意図をお伝えし、広げて行ければと思い、小さいながらもガーデニングスクールの設立を考えました。
この力一デニングスクールでは、造園学として多くの教科を増やして講師陣を招き、そこで皆様に勉強して頂くことよりも、短期間で最大限に学べて身につけて頂く方向性を模索してみました。
本校での座学はスライドで、私の独特の考え方を交えた講義にしたいと考えております。また実習では皆様に直接、土や植物に触れ、風や空気を感じて頂くこと等により、自然の与えてくれるわくわくするような楽しさや大切さを学んで頂けるのではないかと思っております。
また造園に関してだけでなく、当然、住まいとの係わりは大変重要です。それらは建築家を交えてお話していきたいと考えております。どうぞ皆様、私と自然を通じた庭造りやガーデニングを楽しんでみませんか。
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